【追記あり】UTADA HIKARU SINGLE COLLECTION VOL.2発売記念小話

宇多田ヒカルさん「Utada The Bestは買わないでね」 - Togetter
さて。宇多田のシンコレVOL.2には、ツイッターで自身が「同じ日にユニバーサルから出る『Utada the Best』は私の意志とは無関係です」といったつぶやきをした事が大きな話題になりました。そんな中で2アイテムがいよいよ発売になったわけですが、私はこの一件を通じて音楽は『芸術』なのか『産業』なのかという事を考えまして、ちょっとまとめてみます。長文乱文で失礼します…

音楽はビジネスでもある事実

まぁ、アーティスト側の意向とは無関係にレコード会社がベスト盤を出すって言うケースはよくあるんだけど。レコード会社は楽曲の原盤権を持っているから結局はいろんな事が出来てしまうんじゃないかなぁ…代表的な例としては、過去にはスピッツが「解散するまでベストは出さない」って言っていたけど出てしまってメンバーが謝罪コメントを出して、その後またベストが出て先に出た方は廃盤になったって言うケースがあったし。
あと、ドリがエピックからVirginに移籍したとき(1997年)に、エピックからシングルコレクションが出た時にマサさんがラジオでアーティスト側の意向とは無関係だから買わないで欲しいって発言をしていたのを最近になって初めて知りました。あれを買ったのは中2の秋だった。何も知らなかった…そう、レコード会社移籍時にそんなベストが出るのって通過儀礼的なもんかね?ってずっと思っていました。
レコード会社としてはあくまでも原盤権を行使した中でのベスト盤を発表しているだけに過ぎないんですが、そういう手法であればベスト盤というのは過去の楽曲をリマスターしたり過去のビジュアルを使用すれば結構ローコストに仕上がるんじゃねぇのって思ったりする。契約期間に満たない時の消化の手段に使われたりとかするんだろうなぁ…ただしアーティストの意向も絡んでベストが出るとすればビジュアルとかライナーもそれ相応に作り上げていくものなのですが、そうじゃなければベスト盤のビジュアルってダサダサなものが多いし、ローコストでベスト盤を作れたらレコード会社にとってはうまい話になるもんなんですかね。こうなってしまうと音楽がただのビジネスアイテムになってしまうのですが、レコード会社にとってはあくまでも利益活動の一種に過ぎなかったりする。そういった事でレコード会社とアーティストの間に軋轢が生じるわけで、そうなるとレコード会社にとってはマイナス要素になってしまってもそれは関係ないのかなぁ…

音楽は芸術である、と言う意思

メジャーもインディーもジャンルも問わず、音楽は表現の手段である事に変わりはないはずです。たとえメジャーに進出したとしても何百万枚も売れたとしてもその意思は変わらないと思います。そうなればベスト盤も表現の一環になりうるわけで、実際に何かの節目に発表されるベスト盤っていうのにはアーティストの意向も確実に含まれていると思うのです。今回のSingle Collection VOL.2は、VOL.1と比較すれば新曲も入っているし曲順も単純にリリースごとじゃない面においては、アーティストの意向があって成立しているのは明確ですね。
自分たちが作り上げてきた楽曲を作品にする一方で自分の意図とは違うところで別のアイテムが出てきたらやっぱりいてもたってもいられない。そういう点で、宇多田がこういうツイートをしたことは、音楽がビジネスでもあるという事実に対峙して表現者としてのアイデンティティーが現れたんだなぁ、とも思いました。
宇多田はだいたいティーンネイジャーの頃から音楽と言う芸術に携わっていて、しかもあれだけのセールスを記録したとなるとやっぱり産業としての音楽として捉えられてしまいがちという印象があったんですが…特にデビューしたばかりの頃は自分も高校生だったし、オトン出しゃばりすぎと思ったし、売れすぎてて嫌いだったし(コラ)。表現活動をする中で、音楽ビジネスに揉まれたりいろんな事言われたりして、それでも音楽という芸術作品を作り続けているという様々な自我が目覚めて成長していった証なんだよなぁ…って感じました。

で、結局「音楽は誰のものか?」と言うところにたどり着く

…そうなんですよ。リスナーの為の音楽なのか、表現者の為の音楽なのか、ビジネスのための音楽なのか、誰のものでもないって言っちゃえばそこで終わりなんですが。
Utada the Best』を出しているのはユニバーサルの洋楽部門ですね。ユニバーサルって外資系だもんなぁ、外資系ってカッコいいイメージがあるけど結局は成果主義であって音楽をビジネスとしてするところでは相当シビアなんだよね。メジャーでいい音楽をやったとしても、売り上げが伴わなければ思うように音楽活動は出来ないし傑作を作ったとしてもレコード会社の意向で思うようにプロモーション出来ないって言う事も多いようです。新人でも契約してレコーディングをしてもレコード化されなかったなんて事よく聞くし。そうなるとやっぱり、音楽は産業になってしまったのかって言うやるせなさが出てきますよね…商業的になりすぎるとリスナーの興味も薄れてしまう。ただ、やっぱりUtadaとしての作品は持ってないので「Utada the Best」が出ると聞いて興味を持ってしまった自分がいました。買わないけどな。