「SENSE」に関する考察VOL.4〜ようやく全曲ライナーノーツの巻〜

遂にアルバムを聴く瞬間がやって来た。家に帰ってきてから部屋に行ってCDのビニールを剥がし、帯を取ってジャケットを開いて中からCDを取り出す。取り出したCDをラジカセの中に入れて再生ボタンを押す行為がスローモーションのようだった。なんだろうこのドキドキ感…小学生の頃、お小遣いとかを貯めてなんとかCDシングル(8cm)を買って封を開けてラジカセに入れていたときのような感覚を思い出した。こんなの久しぶりなんですけど。

1.I

スピーカーから聴こえてきたギターのストロークはどこか閉塞感を帯びてモノトーンな印象を受けた。ボーカルはなんだか浮遊した感じ。あやふやな歌いまわしは既にイッちゃってると言うかなんつーか。歌詞も、ここ最近は歌詞カードを見ないでいたんですが、歌詞カードを見ないと何歌ってるんだかわかんない。モノクロームの世界にドス赤い血が染み出してくる感じ。聴いていると体中の血液が逆流してるんじゃないかという錯覚を抱いてしまった。

2.擬態

たぶんアルバム内のリード楽曲だと思います。トビウオニギタイと言うキーワードがアルバム発売前に散らばっていたのですが、その正体はこの曲でした。「MUSICA」で鹿っぺが「この曲が出来たからこういう方法でアルバムを発表せざるを得なかったんじゃないか」って述べてたけど私も全く同じ事を思いました。得体の知れない閉塞感を帯びた1曲目から、海の中から見える光でもって浮上するような感じがした。だけどやっぱり血なまぐさい。この血なまぐささがアルバムの全体図を物語っていると言うか。

3.HOWL

ミスチルとはいえもう40代ですよ。そういえばここまでの曲の歌詞には疑問符が多いなぁ、と気付いた。あぁ、40と言えば不惑ですか…うわーもうそんな年齢かぁなんて考える今日この頃。

4.I'm Talking about Lovin'

M-3,M-4は初期ミスチルを思い浮かべるような軽快な楽曲が続くわけですが、あーでもM-3は『旅人』みたいな雰囲気もあるなぁ。愛について歌っているというか、流れ的には伝えたい事はただ一つだけって言う印象があるなぁ。キラキラしたアレンジなんだけどやっぱり血なまぐさい。しかし歌詞の中にはサッカー用語も出てくるんですけど。

5.365日

1年前にCMで初めてこの曲を聴き、昨年のドームツアーでも披露されていたにもかかわらずCD化されていなかったという曲をやっとCDで聴ける事が出来て嬉しい。前半4曲が怒涛の流れだったので、ひとまずここで一息と言った感じで、救われた感じがする。

6.ロックンロールは生きている

救われるようなM-5から、再び奈落の底へ落ちるような激しい曲。ここ最近は封印されていた感じの、暗くてドロドロしたダークサイド。歌詞もシャウトも凄まじい、さらにサクラップが出てくるとは!RADWIMPS相対性理論とかまってちゃんが合体したようなとんでもない曲だなぁ〜って言うのが第一印象でした。打ち込みから入ってバンドサウンドに展開して、さらに♪ライラライラライラライ♪ってコーラス、間奏での「Rock'n roll is not DEAD」とつぶやくサウンドコラージュ、戦場の中を駆ける重戦車のようなドラムスが強烈。

7.ロザリータ

こちらもしばらく封印されていたエロ路線。ストリングスを含んだアレンジはまるでムード歌謡(コラ)的な要素も含んでいますが、このアレンジも完璧だなぁ。ロザリータと呼んでいるけど、ロザリータだからますますエロティシズムを感じます。R指定ですかこれは。

8.蒼

ピアノがメインのシンプルすぎる曲ですが、穏やかな印象の中深い情念を帯びている曲だなぁと。間奏の口笛も生々しいと言っていいんじゃないかと。

9.Fanfare

去年「ワンピース」映画の主題歌になっていて、そのあと今年の正月に長野旅行に行ったときに、小学生の甥っ子が♪ちょっと待ってと言われたって〜♪って歌ってました。ワンピースの影響力を感じたのと同時に、彼にミスチルを叩き込ませようと思いましたが無理でした。そうだなぁ、これがアルバムの中で一番明るい曲なんじゃないかなぁ〜って思っています。

10.ハル

こんなに瑞々しい曲をまだ生み出せると言う軽い衝撃を受けました。この曲を桜をバックに聴けたら泣けそうな予感がする。

11.Prelude

重厚なストリングスから始まるんだけど軽快なサウンド
歌詞には「長いこと続いてた自分探しの旅もこの辺で終わりにしようか」と言う歌詞が載っていて、思わずえぇぇぇぇ〜〜っ、と心の中でシャウトした。全フレーズがどっかんどっかん胸に突き刺さる。過去に発表された楽曲の歌詞がチラチラっと出ているのでドキドキしてしまったのだが、終わりではなくスタートであると言う強い希望を持った曲だなぁ、だってPrelude(前奏曲)だし。また、もう一つくわえるとしたらStarting Overって言う言葉も似合うかなぁ、って今思ったんですけど。

12.Forever

「Split the Differnce」のエンドロールで流れた曲がアルバムの最後を飾る。イントロが流れた時に「えぇ〜もう終わりなの!?」って思ったのは「Split the Differnce」を見たときと全く同じ感情だった。ここまで暗いところと明るいところを行ったり来たりしていた世界に安堵感を覚えつつも、一つの協奏曲が終わってしまう寂しさを感じる。非日常から日常に戻っていく感覚なのかな…ホッとするんだけど、このアルバムの恐ろしい魅力に憑りつかれて、気が付いたらもう一回CDの再生ボタンを押してしまうわけで…